ベルギーのモンスを拠点に、周辺に点在するユニークな世界遺産を巡る1日。前日に引き続いて**モンス**を訪れたこの日は、教科書では学べない、人類の歴史や産業の進化を肌で感じられるスポットを巡りました。地下に広がる新石器時代の鉱山から、近代技術の粋を集めた巨大な運河昇降機まで、知られざるベルギーの魅力を深掘りします。
一人旅での世界遺産を巡るヨーロッパ5ケ国周遊旅行(全60日間)のまとめの記事です。
歴史を遡る旅:スピエンヌの新石器時代の火打石採掘地
この日、最初に向かったのは、世界遺産「モンス市スピエンヌの新石器時代の火打石採掘地」です。ガイドブックにはあまり記載されていない穴場スポットで、Google Mapを頼りに探しました。
アクセスは一苦労?
モンス駅からはバスで向かいますが、バス停を降りてからも、その場所を見つけるのにかなり苦労しました。案内表示がほとんどないため、まるで宝探しのような感覚です。しかし、それだけに辿り着いた時の達成感もひとしおでした。
地下に眠る人類の営み
のどかな田園風景の地下に、新石器時代の広大な採掘場が眠っています。
この場所は、新石器時代(紀元前4400年~紀元前2000年頃)に、石器の材料となる高品質な火打石を採掘するために掘られた、地下坑道群の遺跡です。現在、地下の採掘地は一般公開されていませんが、この一帯の地面の下に、当時の人々が手掘りで築いた巨大な地下都市が広がっていると想像すると、そのスケールに圧倒されます。
採掘品の展示と当時の技術
実際に採掘された火打石。当時の技術と知恵を感じられます。
近くには研究所のような施設があり、そこで様々な**採掘品**を見せてもらえました。当時の人々がどのように石器を作り、火打石を加工していたのかを垣間見ることができ、人類の技術の原点に触れる貴重な体験でした。
産業革命の記憶:ワロン地方の主要鉱区群
次に訪れたのは、**世界遺産「ワロン地方の主要鉱区群」**の一部である**グラン・オルニュ**です。これは、19世紀の産業革命を支えた炭鉱複合施設で、当時の炭鉱労働者の生活や技術の進歩を今に伝える貴重な遺産です。
グラン・オルニュ(Grand-Hornu)
産業革命期の炭鉱と理想的な労働者居住区が一体となったグラン・オルニュ。
グラン・オルニュは、単なる炭鉱跡地ではありません。当時の炭鉱主が労働者のために計画的に建設した、集合住宅、病院、学校なども含む「理想的な炭鉱都市」の姿が残されています。ここでは、近代産業の黎明期における社会のあり方や、人々の生活に思いを馳せることができます。
水運技術の粋:世界最大のボートリフトとサントル運河
この日の締めくくりは、**ベルギー**が誇る水運技術の**世界遺産**巡りです。まずは、近代の巨大な運河昇降機を見学しました。
ストレピ・ティウ船舶昇降機(Strépy-Thieu boat lift)
間近で見るとその巨大さに圧倒される、ストレピ・ティウ船舶昇降機。
近くで見るとその巨大さに度肝を抜かれる**ストレピ・ティウ船舶昇降機**は、世界最大級の垂直昇降式ボートリフトです。船がそのまま上下する様子は圧巻で、現代の技術の素晴らしさを実感できます。
世界遺産「ラ・ルヴィエールとル・ルーにあるサントル運河の4つのリフトとその周辺 (エノー州)」
水力で動く歴史的なボートリフト。今も現役で船を通しています。
続いて徒歩で約30分、もう一つの**世界遺産「ラ・ルヴィエールとル・ルーにあるサントル運河の4つのリフトとその周辺」**へ。こちらは19世紀末から20世紀初頭にかけて建設された歴史的な水力式ボートリフトで、今も現役で稼働しています。近代的なストレピ・ティウとは異なる、昔ながらの機械仕掛けの美しさと、船がゆっくりと昇降する様子は、まさに産業遺産の生きた証でした。
この日は結局、「モンス市スピエンヌの新石器時代の火打石採掘地」、**「ワロン地方の主要鉱区群」**の一部、そして**「ラ・ルヴィエールとル・ルーにあるサントル運河の4つのリフト」**と、3ヶ所もの**世界遺産**を巡ることができました。移動も多く、かなり頑張った一日になりましたが、それぞれが異なる時代と文明の物語を語りかけてくるようで、非常に充実した旅となりました。
ベルギーの知られざる産業史と、それを支えた人々の営みに触れる、忘れられない一日になることでしょう。